人間には誰でも欲望や夢・名誉が欲しい。それが一つだけじゃな く全ていっぺんに欲しいと誰でも願っている。 帰り道私はクラスメイトの美樹に唐突な質問を受けた。 「妄想日記って知ってる」 「何それ? オタ系の趣味?」 また始まった。彼女はよく意味の分からないことを言う。この前 も『世界の廃墟』という本を真剣に読んでいた。 「違うよ。自分が書いた文が本当になるんだよ」 私は美樹の言ってることを適当にスルーさせて聞いていた。 「アハハ。夢見すぎてんじゃないの?」 美樹は真剣だ。私は冗談半分彼女との話を合わせていた。 「それ本当にあるの?」 うつむき加減でうなずいた美樹の表情からは、いつもの明るい彼 女とは別のもので、何か『妄想日記』というものに大きな裏が隠さ れているのでは一瞬そう思ってしまったが、彼女の表情からそこま で聞くことは出来無かった。 私は妄想日記というものに少し興味を持ち始め、次の日美樹に 「昨日はゴメン。あんなこと言って。もう一度妄想日記のこと詳し く教えて!」 両手を合わせてゴメンって謝った。 彼女も少し戸惑いつつも、一瞬ためらって「……うん、いいよ。で も今はダメ。人がいるから。放課後PM:4:00に校門で待ってるね。」 たかだか日記の話をするのにそこまで引っ張る必要があるのだろ うか? 不思議に思いつつも彼女が指定した時間に校門に行くと美樹が待 っていた。 「ゴメン〜、待ったぁ?」 「そんなことないよ。今来たとこだし」 「ねぇ、それより、朝の続き教えてよぉ」 私は彼女に催促するように言うと、何かを思い出したよう話し始 めた。 「妄想日記って言うのはね、簡単に言うと何でもかなえてくれる魔 法の本。」 「ふ〜ん、え? それだけ?」 何かあんまり期待していた話とは違って少しがっかりした。それ より今その妄想日記がどこにあるかだけ聞ければそれでいいって感 じだしなんて思っていた。 「それどこにあるの?」 「……」 「何だ知らないんじゃん」 ここまで話しておいてって感じでもしかしたら美樹の出し惜しみ かもね。 そう思ってしまった。 帰り道、美樹と別れた後、道路の真ん中に、一冊の本が落ちてい た何となく拾った由香は何も書かれていない本を自分でも分からな いけど家に持ち帰っていた。 その夜、そんな本のことなんか忘れてもしそんな魔法の日記が本 当にあったらこんな事をしようあんな事をしたいとか、どこへ行っ て何がみたいとか、芸能人は誰に会いたいとか、色々考えながら気 が付くと寝ていた。 朝起きると、じゃない。起こされたの、それもなんかちょっと変。 「……おはよう」寝ぼけながらママに挨拶をすると、玄関に芸能人が 来ているって言うじゃない。……? え、ウソはやめてよお母さん。 フフフ可愛いんだから。子供をからかって。まぁ、でも、そのウソ にのってあげようじゃないの。 階段を下りて玄関へ出ると、そこには私の好きな成崎凌くんが立 っているじゃない! 寝るときは全裸主義の私は大好きな成崎くんに裸を見られちゃっ たよぉ〜! 一瞬フリーズった私。そこには満面の笑みで迎えている成崎くん。 あぁぁあ! どうしよう。急いで玄関のドアを閉め1分で着替えた私って天 才? そして玄関へ直行! いざレッツゴーッ! 「愛しの成崎くーん! ってあれ? いない。成崎くん?」 玄関を出て左右を確認しても成崎くんらしき人はいなかった。少 し冷静になって考えてみて、ここは田舎だということを思い出し、 こんな田舎にそれも、朝に自分のために芸能人が来るはず無いなと 自分に思い込ませた。 今日も美樹と一緒に登校した。彼女とは、結構前からの知り合い で、世間一般で言えば幼なじみってところかな? 「ねぇ美樹、今日さ成崎君に会っちゃったさ。」 「え? どうやって?」 彼女も成崎ファンなのだ。ファン歴は大体一緒かな。 「ん〜…、よく覚えてないけど、玄関にいた、ってウケルよねぇ〜。 しかもあたしマッパじゃん。マジビビッた」 「もしかして寝る前に成崎君に会いたいなんて思った?」 え? 何で分かったのか少し不思議だった。 「うん。思ったよ。何で?」 「いや、何でもない」 何かおかしいよな最近の美樹。何か悩み事でもあるのかな? 休み 時間でも聞いてみようかなって思った。 一時限目のチャイムが成って美樹の机に行った。 「何か悩みとかある?」我ながら唐突な質問だな、心の中でそう思 った。 「え? 無いよ。何で?」 「何か最近おかしいよ。疲れてるんじゃないの?」 「そんなこと無いって」 笑顔で答える美樹が余計何か隠してるんじゃないかって思って心配 になった。 放課後私たちはいつものように一緒に帰った。 「本当に今日成崎君に会ったの?」 突然美樹が今日の朝のことを聞いてきた。 「うん、ママも見たからホントだよ」 「ふ〜ん」 「どうしたの?」 何かこの話をしたときから美樹の様子がおかしい。やっぱり成崎 君に会いたかったのかな。二人ともファンクラブに入ってるから羨 ましがってるのかもしれないな。 「じゃ、今度一緒にライブ行こう。それでチャラって事で」 「ううん、そうじゃないの。」 「ふ〜ん…まあいいや」 途中美樹と別れて私は家に帰る途中ふと雑誌に載っていたパフェが 食べたくなった。 (あのお店のパフェ食べたいな〜) 「はい、お待たせいたしました。デコレーションパフェです」 「?」 何が起きたのか一瞬理解が出来なかった。えっと、今パフェを食 べたいと頭の中で思ったらパフェが出てきた? 何でだろう。かな り不思議に思いながら私は家に帰ると、ママが割れたコップを片付 けいた。 「どうしたの? ママ」 「ちょうど今、食器の片づけをしていたらコップがね割れちゃって」 「あ〜あ、だらしないな」 そう言って、自分の部屋に行った ふと妄想日記のことを思い出した。 (今日起きた事って妄想に気が関係するの?) 美樹に電話してみた。 「ねぇ、もしかしたら私、妄想日記で願いか叶っちゃったみたい」 「妄想日記にとり憑かれた人は――」 え? 取りつかれる? まぁいっか、今の私は最高にハッピーな んだし「うん、何?」 「連鎖するの、由香は今何か思ったことが叶えられるかもしれてな いけどそれで、被害をこうむる人が出てくるの。それが、巡り巡っ て自分に還ってくるの。収拾が効かなくなって妄想日記を書いた張 本人が帰らなきゃなら なくなる。日記の世界に。」 「え? 日記の世界って? ゴメン意味分かんない」 美樹の言ってることが全く理解できなかった。連鎖? 被害? どういう事だろう。 「何か変わったこと無かった?」 何かといわれてすぐ出てくるほどそんなことあったかなぁ 「ねぇ、どうなっちゃうの?」 ここは電波が悪い。ここ電波少ないんだよな。私は窓の方へ歩い ていくと電波 が建っていた。さっきまでは無かったのに。 「……」 「どうしたの?」 「……何でもない。ねぇ、それ最後はどうなるって?」 私は震える声で聞いた。 「最後は消される、この地球から。あなたを知っている人間の記憶 からも全て消去される」 体が硬直して、携帯を床に落としてしまった。 呼吸が出来ない。 時間の流れが一瞬止まったように感じた。 「……美樹? ……美樹……?」 微かに名前を呼ぶ声がした。音も聞こえなくなってきている。 気づくと辺りは暗く叫んだ。喉が裂けるほど叫んだ。といっても 本の中からだ。 「出して! ここから! 美樹! お願い」 「また100年後にね」 「それじゃあ、おばあちゃんになっちゃうよ。ねぇ、出して。あた し達親友じゃない」 「やっぱりこんなもの作るんじゃなかったな」 「え? 何々意味分かんないよ」 彼女は本を見つめながらそう呟いた。 「前の時の失敗だった」 「前の時は、ナポレオンだった。彼は常に権力への執着心が強く、 確かに権力を手に入れることは出来たかもしれない、この日記のお かげで。でもそれによってどれだけの人が被害をこうむったか。彼 は知らない。だけどナポレオンが最後殺されないで島流し程度にす んだのは彼が残した功績が大きいから」 何を言ってるの美樹? あなたは美樹じゃないの? あなたは 誰? 「私は……」 「ねぇ! 聞こえないよ!」 ―― 「どうですか? こういうの」 「君ねぇ、オチがイマイチだよ。もう一度やり直し」 fin NAOTO著
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